「パートだから、退職金はないだろう」
そう思っている方は多いと思います。私もそう思っていました。
でも調べてみたら、条件を満たせばパートでも対象でした。しかも金額の計算方法は、法律で決まっていて公開されています。
この記事では、保育士の退職金のしくみを整理します。
まず「園によって違う」の正体から
退職金の話が分かりにくいのは、園によってしくみが違うからです。でも、違うのは「どの制度に入っているか」だけです。
| 園の運営主体 | 退職金のしくみ |
|---|---|
| 社会福祉法人 | 全国共通の社会福祉施設職員等退職手当共済制度 |
| 株式会社・NPOなど | 共済制度の対象外。園独自の制度、中小企業退職金共済、またはなし |
| 公立 | 自治体の条例による退職手当 |
そして大事なのが、保育所は「登録しなければならない社会福祉施設等」に含まれていることです。
社会福祉法人が共済契約を結んだ場合、その法人が経営する保育所は必ず登録しなければなりません。
つまり、社会福祉法人の保育所であれば、全国どこでも同じ計算式になります。ここはバラバラではありません。
自分の園がどれか、求人票で分かります
運営している法人は、求人票に書かれています。「社会福祉法人◯◯会」と書かれていれば、この共済制度の可能性が高いということです。
求人票の見方は、こちらにまとめています。
パートでも対象になります
ここが、この記事でいちばんお伝えしたいところです。

制度のパンフレットには、加入しなければならない職員として、こう書かれています。
イ.労働時間が就業規則で定める正規職員の所定労働時間の3分の2以上で、1年以上の雇用期間を定めて使用される職員は、採用日から加入。
そして、こうも書かれています。
※非常勤職員、嘱託、パート等の名称で呼ばれる者を含みます。
さらに、はっきりとこう書かれています。
加入対象職員は、職名・雇用形態(常勤や非常勤)ではなく、職員の雇用契約の内容等で個別判断します。
「パートだから対象外」ではありません。見られているのは働く時間です。
計算してみましょう
正規職員が週40時間の園だとします。3分の2は、約26.7時間です。
- 週4日×1日7時間=28時間 → 3分の2を超えています
- 週3日×1日6時間=18時間 → 届きません
短時間勤務でも、日数や時間によっては対象になります。
なお、1年未満の契約でも、更新して1年を経過した日から加入することになっています。
いくらもらえる?
計算式は、こうなっています。
計算基礎額 × 支給乗率 = 退職手当金
計算基礎額は、退職前6か月間の本俸月額の平均に応じて政令で定められた額です。最低62,000円から最高360,000円までの20ランクに分かれています。
自分の給料の額がそのまま入るわけではないので、そこは注意してください。
支給乗率は、被共済職員期間(加入していた期間)と退職理由に応じて、法律で定められています。
早見表(2025年度・普通退職の場合)
公式の早見表から、計算基礎額が160,000円の場合を抜き出します。
| 加入期間 | 退職手当金 |
|---|---|
| 1年 | 83,520円 |
| 5年 | 417,600円 |
| 10年 | 835,200円 |
| 11年 | 1,236,096円 |
| 15年 | 1,726,080円 |
| 19年 | 2,743,632円 |
| 20年 | 3,271,200円 |
| 25年 | 4,663,200円 |
| 30年 | 5,776,800円 |
11年目と20年目で、大きく上がります
表を見てください。
- 10年 → 11年で、約40万円増えています
- 19年 → 20年で、約53万円増えています
1年の違いで、これだけ変わります。
辞める時期を考えるとき、自分が今何年目なのかを確認しておくと、判断の材料になります。
一度辞めても、3年以内なら期間がつながります
これは、ぜひ知っておいてほしいことです。
パンフレットには、合算制度としてこう書かれています。
被共済職員である期間が1年以上である場合、退職した日から起算して3年以内に、退職手当金を請求しないで再び被共済職員になり、かつ、その者が機構に申し出たときは退職手当金額の計算に際し、前後の各期間を合算します。
つまり、こういうことです。
- 1年以上勤めて、辞めた
- 退職手当金を請求せずに、3年以内にまた対象の施設で働きはじめた
- 機構に申し出た
この3つがそろうと、前の期間と後の期間が足されます。
出産や子育てで一度離れて、また戻る——そういう働き方をする人に、直接関わる制度です。

気をつけたいのは「請求しないこと」が条件だという点です。受け取ってしまうと、そこでリセットされます。
戻ることを考えているなら、辞めるときに一度確認しておくといいと思います。
ブランクからの復帰については、保育士はブランクがあっても復帰できるにも書いています。
掛金は、自分では払いません
パンフレットには、はっきり書かれています。
掛金は共済契約者が負担するもので、被共済職員が負担するものではありません。
給料から引かれることはありません。施設が払っています。
もらえないケースもあります
次のような場合は、支給されません。
- 加入した日から1年未満で退職したとき
- 被共済職員期間となる月の合計が12か月未満のとき
- 施設が掛金を納付していないとき
- 共済契約が解除された日以降に退職したとき
- 請求権が時効(退職した日の翌日から5年)で消滅したとき
また、業務に従事した日数が10日以下の月は、期間に算入されません。
自分が対象か、確かめるには
- 雇用契約書・就業規則(自分の所定労働時間と、正規職員の所定労働時間)
- 求人票の運営法人(社会福祉法人かどうか)
- 園に直接聞く(退職金共済に加入しているか)
- 福祉医療機構(WAM)のホームページ
まとめ
- 退職金は園によって違いますが、違うのは「どの制度か」です
- 社会福祉法人の保育所は、全国共通の共済制度。保育所は登録が必要な施設に含まれます
- パートでも、正規職員の所定労働時間の3分の2以上なら対象になります
- 判断されるのは職名や雇用形態ではなく、雇用契約の内容です
- 金額は計算基礎額 × 支給乗率。計算基礎額は62,000円〜360,000円の20ランクです
- 11年目と20年目で、金額が大きく上がります
- 一度辞めても、請求せずに3年以内に戻れば期間が合算されます
- 掛金の自己負担はありません
- 1年未満で辞めると支給されません
「パートだから関係ない」と思っていた方こそ、一度確かめてみてください。
給与のしくみについては、保育士パートの時給はどう決まる?もどうぞ。


