保育士の求人票でよく見かける「処遇改善手当あり」。
でも、こんなふうに思ったことはありませんか。
- 結局、いくらもらえるの?
- 給与明細に「処遇改善手当」という項目がない
- 3月に、まとまったお金が出たのはなぜ?
- パートでも対象になるの?
処遇改善のしくみは、令和7年度(2025年度)から大きく変わりました。 古い情報のままの説明も多いので、この記事ではこども家庭庁の資料(2026年10月時点)をもとに、順番に説明します。
※制度は毎年のように見直されます。最新の情報は、こども家庭庁のホームページで確認してください。
処遇改善手当は、国から園に出るお金です
まず、お金の流れから説明します。
私立の認可保育園には、子どもの人数などに応じて、国や自治体から運営費が支払われます。この運営費の基準を「公定価格」といいます。
この公定価格に上乗せされるのが、「処遇改善等加算」です。
つまり——
- 国や自治体から、園に加算のお金が入る
- 園が、そのお金を職員の給料に配る
という流れです。
ここで大事なのは、「処遇改善手当」という名前は、園がつけている名前だということです。国の制度の名前は「処遇改善等加算」です。
そして、園はこのお金を、基本給に含めて払ってもいいことになっています。「処遇改善手当」という項目が給与明細になくても、もらっていないとは限りません。
令和7年度から、3つの区分に変わりました
それまで「加算Ⅰ・Ⅱ・Ⅲ」と3つに分かれていたものが、令和7年度からひとつにまとめられ、中身が区分1・区分2・区分3に整理されました。

| 区分 | 以前の名前 | 対象 | 中身 |
|---|---|---|---|
| 区分1(基礎分) | 加算Ⅰの基礎分 | 全職員 | 経験年数に応じた昇給のしくみ |
| 区分2(賃金改善分) | 加算Ⅰの賃金改善分+加算Ⅲ | 全職員 | 給料の底上げ(ベースアップなど) |
| 区分3(質の向上分) | 加算Ⅱ | 副主任保育士・リーダーなど | 役割と研修に応じた上乗せ |
これとは別に、人事院勧告にあわせた引き上げもあります(あとで説明します)。
区分1:経験年数に応じた昇給
職員の平均経験年数に応じて、加算の割合が決まります。長く働く人が多い園ほど、加算が多くなるしくみです。
このお金は、定期昇給などに使われます。
区分2:全職員の給料の底上げ
全職員が対象です。基本給、毎月の手当、賞与、一時金など、払い方は園が決めます。
以前の「加算Ⅲ」の分もここに入っています。区分2の割合には、公定価格上の職員1人あたり月9,000円相当の改善を行うための分が含まれています。
区分3:役割と研修に応じた上乗せ
副主任保育士やリーダーなど、役割のある人が対象です。キャリアアップ研修の修了が条件になります。
キャリアアップ研修のくわしいしくみは、こちらにまとめています。
いくらもらえる?
いちばん知りたいところだと思います。
一人ひとりの金額は、園の配分で決まります。 そのため「全員が月○円」とは言えません。
ただ、国が決めている目安はあります。
区分3は、金額が決まっています
| 対象 | 金額 |
|---|---|
| 副主任保育士など | 月額4万円まで |
| 職務分野別リーダーなど | 原則月額5千円 |
リーダーの金額は、5千円から4万円未満の範囲で上げることもできます。
「10.7%」「5.3%」は、給料がそのまま上がる数字ではありません
ニュースで見た方も多いと思います。
- 令和6年度:公定価格の保育士等の人件費を10.7%改善(過去最大)
- 令和7年度:さらに5.3%改善(令和8年度も引き続き確保)
これは、人事院勧告(国家公務員の給料の見直し)にあわせたものです。保育士の人件費は、国家公務員の給料に準じて計算されているためです。
ただし、ここは誤解が多いところです。こども家庭庁の説明資料には、こう書かれています。
単純に、支払っている給与に増額割合(5.2%や10.7%等、例年、国から提示される割合)を乗じるものではない。
つまり、「自分の給料が10.7%上がる」という意味ではありません。 園に入るお金の計算に使われる数字です。
それでも、この引き上げ分は全額を職員の賃金の改善に充てることが、加算を受ける条件になっています。
なお、こども家庭庁の資料によると、保育士等の処遇は平成25年度以降、累計で34%改善されています。
いつもらえる?3月にまとめて出ることがある理由
毎月の給料で出るのが基本です
区分2と区分3をあわせた改善額のうち、半分以上は、基本給か毎月決まって支払われる手当で出すことになっています。
区分3は、全額を基本給か毎月の手当で出します。
年度の途中で決まった分は、一時金になりやすい
一方で、3月などにまとまったお金が出ることがあります。
これは、人事院勧告にあわせた引き上げが、年度の途中で決まるからです。
こども家庭庁の資料には、こうあります。
人事院勧告に伴う国家公務員の給与が増額する際には、補正予算において改定内容を反映し、国家公務員給与の改定に準じて、各年度の4月まで遡って公定価格の引上げを行っている
流れにすると、こうなります。
- 年度の途中で、国家公務員の給料の引き上げが決まる
- 国の補正予算で、その年の4月にさかのぼって公定価格が上がる
- 園は、さかのぼった差額を職員に払う
さかのぼった分は、毎月の給料に入れようがありません。そのため、一時金としてまとめて払われることが多くなります。
資料には、この差額について「速やかに職員に支払われることが求められる」とも書かれています。
余った分は、翌年度に払われます
もうひとつ、加算のお金を使い切れなかった場合は、翌年度に、その全額を速やかに職員の賃金として払うことになっています。
支払いの時期や形は、園によって違います。
パートでも対象になります
ここは、はっきりしています。
こども家庭庁のFAQには、区分1・区分2について、こう書かれています。
保育士や幼稚園教諭だけでなく、事務職員、調理員、栄養士やスクールバスの運転手等を含め、通常の教育・保育に従事するすべての職員(非常勤職員含む)が対象になります。
非常勤、つまりパートの職員も対象です。 保育士だけでなく、調理や事務の職員も含まれます。
区分3も、副主任やリーダーの役割にあたる場合は、非常勤職員でも対象にできるとされています。
パートの時給の決まり方は、こちらにまとめています。
「もらえていない」と感じたときに考えられること
「処遇改善手当をもらえていない気がする」というとき、考えられることは主に4つです。
①公立の園は、このしくみの対象ではありません
処遇改善等加算の対象は、国の通知で「都道府県又は市町村が設置するものを除く」とされています。
公立の保育園で働く場合は、給与は自治体の条例で決まります。 加算というかたちではないので、「処遇改善手当」という手当がつかないのが普通です。
公立と私立の給与の違いは、保育士パートの時給はどう決まる?で比べています。
②基本給に含まれていて、見えていない
先ほど書いたとおり、園は加算のお金を基本給に含めて払うことができます。むしろ、毎月の給料で払う分を半分以上にすることが求められています。
「手当」として分かれていないだけ、ということがあります。
③区分3は、役割と研修が条件です
月4万円・月5千円の上乗せは、副主任やリーダーの役割があり、研修を修了している(または修了見込みの)人が対象です。役割がない場合は、区分3の上乗せはありません。
④園が、加算を受けるための条件を満たしていない
加算は、園が申請して認定を受けるものです。
たとえば区分1では、職位に応じた賃金のしくみを就業規則などの書面で整えることや、研修の計画をつくって職員に知らせることが条件です。令和8年度からは、この条件を満たしていない園は区分1の認定が受けられなくなりました。
自分の園の内容を知るには
処遇改善のお金は、職員に内容を知らせることが条件になっています。
国の通知には、次のように書かれています。
賃金改善の具体的な内容を職員に周知していること。
また、賃金の改善を行うときは、その方針をあらかじめ職員に周知することも求められています。
つまり、自分の園の処遇改善がどうなっているかは、職員が知っていてよいことです。
確かめる方法は、この3つです。
- 給与規程・就業規則を見る(職位に応じた賃金のしくみが書かれています)
- 給与明細の項目を見る(基本給・手当・一時金のどこに入っているか)
- 分からなければ、事務の担当の方や園長に聞く
聞くときは、「処遇改善の分は、どの項目に入っていますか」と、項目をたずねる形にすると聞きやすいと思います。
転職するときの求人票の見方
最後に、転職を考えている方へ。
求人票の「処遇改善手当あり」は、金額まで書かれていないことが多いです。また、基本給に含めている園では、「処遇改善手当」という書き方をしていないこともあります。
なので、「処遇改善手当」の有無だけでなく、月給の総額と、賞与・一時金の欄をあわせて見るのがおすすめです。
- 私立の認可保育園か(公立は対象外)
- 基本給と手当の内訳
- 賞与・一時金の実績(「年○か月」など)
- 副主任・リーダーなどの役職のしくみがあるか
- キャリアアップ研修を受けさせてもらえるか
条件の細かいところは、採用が決まってからのすり合わせで確認できます。
求人票の見方は、こちらにもまとめています。
まとめ
- 「処遇改善手当」は、国から園に出る処遇改善等加算を、園が職員の給料に配ったもの
- 令和7年度から区分1・2・3に整理された(旧・加算Ⅰ・Ⅱ・Ⅲ)
- 区分3は副主任など月4万円まで、リーダー原則月5千円。ほかは園の配分で決まる
- 「10.7%」「5.3%」は、給料がそのまま上がる数字ではない
- 年度の途中で決まった引き上げは、4月にさかのぼって一時金で出ることが多い
- パートも対象。調理・事務の職員も含まれる
- 公立の園は対象外。給与は条例で決まる
- 内容は職員に知らせることになっているので、給与規程や明細で確かめてよい

「よく分からないお金」が、少しでも「自分のお金」として見えるようになればうれしいです。




